「他の生徒さんの演奏を聞いたり、どんな風に練習

上達のコツについて・1の続きです。
多くの人の「慣れたやり方」にどんな問題があるのか。
多くの人にとって、慣れたやり方なのが、「とにかく弾いて弾いて身体で覚える」。
しかしこの方法では、自分では気がつかないちょっとした間違いや、悪いクセが、弾けば弾くほど身体に染み込んでしまうことがあります。また、年を取るにつれ、子供の頃できたことができなくなることが多いようです。
・子供の頃は数回弾いたら身体が覚えてくれたのだけど、最近はそれができない。
・ちょっと前まで、覚えたものは暗譜でも譜面が目の前に浮かんだのだけれど最近は浮かばなくなった。など。
もしそのように能力が衰えていなくても、体で覚えこむ練習だけをしていると色々と問題がでやすいのです。
#一度ミスったら、止まってしまう。止まってしまったら、途中からでは弾き始められない
#練習中の曲は弾けるけど、半年前にやった曲はもう弾けない。
#初見はほぼ無理。
#アレンジを変えられないばかりか、テンポも雰囲気も変えられない。
#誰かとの共演中、拍がずれても戻れない。
#我が道を行く演奏になるので、共演者との一体感が出ない。
ということになってしまいがち。
身体に染み込ませることは確かに必要です。
本当に必要です。
しかし、その曲の仕組み(メロディー、ハーモニー、リズム、曲の背景)を理解したり、自分の心身の状態を把握したり、動きを丁寧に確認したり、といったことを繰り返し行うことも必要です。
僕のレッスンでは、まず初歩のスケールやコードを覚える段階で、目と耳と手と、そして言葉をフル活用して、身体と脳を結びつけるということをしっかりとやっていただいています。
すると、弾くべきことを手が忘れてしまっても、目が覚えていたり。目が忘れていても、耳が覚えていたり。手も、目も、耳も忘れていても、言葉(ミソドだったなという風に)が出てきて助けてくれたりします。特に言葉は有効だと感じています。言ってみれば、セーフティネットが張られていくのです。その上で身体に覚えこませたり、理論的なことを学んだりしていきます。
こういったことを丁寧にやっていると、上記で#をつけた項目がそれぞれできるようになっていきます。さらには音楽の楽しみが、広くも深くもなると思いますし、共演者ともいい関係が築けるようになっていくと思うのです。ぜひともチャレンジを!
あると思いますか?
コツなんてないという人もいますが、僕は長年練習したり、レッスンしたりする中で、上達のコツはあると確信しています。
生徒さんを見ていて、とにかくたくさん練習しさえすれば、上手くなると思っている人も結構いるみたいです。確かによほどの天才でない限り、練習は必要だと思います。天才と呼ばれる人でも、大変な努力をした人がほとんどでしょう。
コツというものが、何でも一瞬でできるようになる方法ということだったら無いとも言えるでしょうけれども、より速くより確実に上達する方法ということなら間違いなくありますよ。
一言のアドバイスでグッと良くなることもありますが、そうでなくても、覚えるべきことが多かったり、音やリズムを間違ってしまうことの多い初歩のうちは特に練習の仕方にコツがあります。
ただ、そのコツどおりやることが楽かどうかは別でして、ココが曲者なんですね。
なぜかというと、「新しいやり方」より「慣れたやり方」の方が楽だからです。ピアノ経験のある人にとっては、一層そうかもしれません。
おそらく新しいやり方で15分練習するより、慣れたやり方で60分練習する方がストレスなくできるのだと思います。まして人から言われたやり方ではなおさらストレスになりそうですね。ですから、すぐに慣れたやり方に戻りたくなります。
60分かかっても、弾くことが楽しく、上達できるのなら、その方がいいかもしれません。でもやり方によっては、やってもやっても上達しなかったり、あるいはやればやるほど下手になることもあります。上達に興味が無いなら、それでも良いのですが、僕のところに習いに来るということは上達したいのだと思っていますから、生徒が同じ間違いをくりかえしていたりすると、どんな練習をしているか聞いてみたり、僕がより良いと考えるやり方をやっていただくことがあります。
※ ここで「練習」というのは一人で練習することを想定しています。
(つづく)
Author: Swingy / 外山浩之
ジャズピアノを中心に演奏・指導・作曲をしているSwingyです。音楽する身体についても研究中。